THE FLANDRE MAGAZINE | フランドルマガジン

和歌山ニット

和歌山といえばみかんや世界遺産の熊野古道が有名ですが、実は日本屈指のニット産業地。明治42年にスイス製丸編機を導入し生産を始めたとされています。
低価格の時代の波に押され当時300を越す工場も今や50を数えるほどに減りながらも、作り手達は、新たなる技術を開拓。少しでも安くというもの作りではなく、「自分たちが追求できるもの、勝負できるものは何か?」と研究し続けたたたぐい稀なる技術が、今世界から注目を浴びています。

創業当初は起毛の肌着を生産。起毛と裏毛の技術は日本でも最高峰を誇り、今もなお形を変えて生産されています。ゆっくりと時間をかけて編み上げることで、カシミヤ100%を裏毛にすることも可能に。「通常とは違う視点を持ちながらどれだけ感動を与えられるかが大切。チャレンジは楽しいです。」と山下社長。

明治時代に和歌山でニット産業が始まり全国に商品を販売していたんです。当時ほとんどの工場で採用していた吊り編み機は回転がとてもゆっくりで24時間で20mしか作れなかったので、生産量を求める時代とともに吊り機は減ってしまいました。今の高速機は糸を引っ張り気味で目が詰まり空気が含まれないんですが、従来の吊り機は<スローインダストリー=ローテク>としてゆっくり回ることでループに空気まで編み込めるんです。この風合いは全然違う!やっぱりたまらない!とこの手作り感を再度注目するようになりました。
和歌山は海鮮がすごく美味しいんですが、しらすも魚も糸の原料も同じ。こだわらないとやっぱり美味しいものや良いものはできないんですよ。機械に、素材に、回転にこだわることに気づくことで生地の「風合い」は世界にも挑戦できるものになったんだと思います。
変わった編み地はコンピュータでできます。でも素材へのこだわりは理解と情熱がないとできない。世界に類を見ないものを提供しようと思ったら、綿花、繊維工場、アパレルなど多く同じ想いの人達とコラボレーションをして進化していくことが本当に大切なんです。それを一番に理解し、取り入れているのがフランドルさん。「国産=安価」「外国産=上質」の印象を同じ想いの方々と変えていきたいですね。

今商品を作るのにしなければならないこと。それは「追求して、追求して、追求するということ。」と話すのは工場長。「コットンならアメリカのスーピマ、インドのスビン、エジプトのギザ。元々同じ性質のコットンですが、栽培する風土や気候によって若干変化します。それらをどう組み合わせて配合、紡績するかで絶妙なバランスを生み出すことができるんです。面白いですよ!
長年の技術はもちろん編み機の特性を良く知っているからこそ、その仕上がりを予測し最高の糸から極上の生地を作り出すことができるんです。触れると繊細でとろけるような素材は海外ブランドからも注目を集めるほど高い評価を受けています。」

PROFILE
株式会社エイガールズ A-GIRL'S CO.,Ltd.〒641-0011 和歌山県和歌山市三葛3

工場にずらりと並んだ吊り編み機。一人の技術者が約30台に目を配り生産しています。スローヴィンテージと称される機械一台で生産できる吊り裏毛は一時間に1m。一日約7着分のスエット生地しかできません。それでも他にはない風合いを大切にしたいからこの機械にこだわる...。 そんな職人の意地を見た気がします。「これからのこだわりは素材。それ以外にはない。一番いいものを全精力をあげて作る、原料も編み機も全部良いというものが本当に誇れるものだと思う。」と安宅社長。

現在吊り編み機は専門の職人達が努力をしても再度製造することはできないと言われています。機械が故障したら予備の機械から部品を外して調整するしか部品の調達ができないので、機械を調節するのも技術者のワザ。
編み機の上部には1000本を越える針が並び、ゆっくり時間をかけながら回転していきます。紡績(糸)の原料は大切で、選び抜いた原料に空気を入れて編み上げることで着心地のいい生地になっていくのだそう。回転するごとに頭上にズラリと設置された糸が一本ずつ機械に吸い込まれていきますが、素人にはまるで見えないんです。魔法のように糸を操る技術者の方達に感動を覚えずにはいられない瞬間でした。

初めてヨーロッパに出張した時に「生地の色がなんて違うんだろう?」と衝撃を受けました。微妙な色の表現は日本人には難しい、目の色が違うから色の見え方が違うのか?とショックを感じました。その後イタリアの生地展示会に参加して研究しメリヤスにたどり着きました。
吊り編み機は1907年にスイスツール(吊り機)として日本に取り入れられたものの、採算性の高い高速機械が主流になりその多くを廃棄。でも、「日本人は繊細だから必ず風合いをわかってくれるはず。」と目を付けて買い取り研究を開始しました。
吊り編み機は一時間に1メートルしか編むことができない、いわばローテク。遊び部分が多く、空気を入れながら編んでいくのが特徴なのですが、編み上がった後に体が入るとその人の体に馴染んでくるんです。猫背なら猫背の形に、姿勢がいい人なら姿勢がいい形に。「生地が生きているんです。」それがこの機械に惚れ込んでいるところですね。

安宅浩さん
社長である父親の英宣さんから家業を手伝うことを誘われて仕事をスタートした浩さん。「お恥ずかしい話ですが、父親の仕事内容は余り知らなかったんです。それでも頑張っている父と何か一緒に仕事をしたいと考えるようになって。農業もメリヤスも作るということは一緒。実際に仕事を始めてみるまでこれだけ難しい技術であることとは知らず、さらに継承していく技術者がいないと途絶えてしまう危機を感じとりました。自分がなんとかしないと。そんな感情が湧き上りました。他では決してできない技術を継承し伝えていくことが、和歌山の発展になり技術を世界に広めるチャンスだと。
貴重な機械ですが、作りはシンプル。でも回し始めてからちょっと変えるだけでも違うものが出来上がってしまうので慎重に扱わなければならないんです。一台一台クセが違うし、糸によって掛け方も違う。もう一度同じようにと思っても正直同じようにできるかわからないんです。それほど繊細だからこそ魅力あるものが仕上がるんですけどね。作り手としては誰にも真似できない品をつくる、こんなに嬉しいことはありません。たまに機械から目を離すと、見ているのかな?と思えるほど機械がストップするんです。ずっと親しみをもって接しないと嫉妬する、まるで彼女のようです。笑

PROFILE
株式会社東紀繊維 TOKI SEN-I CO.,Ltd.〒541-0048 大阪市中央区瓦町4丁目4-7 荒川ビル

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